プラチナの社員章
 起業して一年ほど経った頃から、私はライブレボリューションのメンバー同士の「連帯感」をどうやって高めようかと考えはじめました。

  ライブレボリューションの最初のビジネスモデルは、私たちが『常駐コンサルティング』と呼んでいたインターネット分野のコンサルティングサービスでした。簡単にいえば、コンサルタントとしてお客様のオフィスで毎日働くというものです。

  当時、私以外のメンバー全員が、お客様のオフィスに出向き、別々に働いていました。

  従って、みんなが顔を合わせるのは休日くらいしかなかったのです。必然的にメンバー同士の連帯感が薄れていくようなビジネスモデルでした。

  そこで私は半年以上もの時間をかけて、「プラチナで社員章をつくってはどうか」というアイデアを温めていました。

  2002年4月7日(日曜日)の午後、私は集まった経営メンバーたちの前で、不意に「社員章をつくりたい」と口にしました。すると間髪いれずに高木と飯野(当時の経営メンバーの一人)から猛烈な反対を受けたのです。私はまず、その反対意見を出すまでの反射的なスピードに驚きました。彼らは一秒たりとも考えてはいませんでした。そして、彼らが反対する理由を聞いたとき、私は愕然としました。

  「社員章をつけるのは面倒だ」
  「社員章をつけるとかっこ悪い」
  「社員章をつけるのを嫌がる人が出てくるはずだ」

  ライブレボリューションのことを想って半年間も温めていたアイデアを一瞬で否定されただけでなく、その反対する理由が至極個人的で感情的なものだったのです。自分を犠牲にしてまでもライブレボリューションをより良くしてゆこうと考えるべき経営メンバーたちから、こんなにも消極的な反対意見が飛び出してくるとは情けない話です。

  しかし、私はぐっとこらえました。よくよく考えてみると、このアイデアは私自身も時間をかけてたどり着いたものでしたし、何も説明を聞いていない(といっても、説明する前に猛反対してきたわけですが)彼らには理解しがたいものもあったに違いないからです。

  大和証券に勤めていた頃、正直に言って私も社員章をつけるのが面倒でした。また、会社によっては、オフィスから一歩出た時点で敢えて社員章をはずす人たちがいることも知っていました。人に迷惑をかけたり、損をさせたりする会社で働いている人たちは、外で社員章をつけていると身の危険を感じることがあるのだそうです。

 ただ、自分が会社を創ってみてはじめて、「社員章には創業者や経営者の想いが込められているんだな」ということがわかりました。

  アイデアを温めていた半年間に私が思いついた社員章のメリットは次のとおりです。

  ①全員が社員章を身につけることで、そこに強い連帯感が生まれる。
  ②理想の企業に近づけば近づくほど、社員章を身につけることに誇りが持てるようになる。
  ③社員章で勤め先が分かってしまうため、外での身勝手な行動を慎むようになる。
  ④社員章を身につけて外を歩くだけで広告効果やブランディング効果がある。


  反対にあうにせよ、やはり社員章を作るべきだと考えていた私は、その後も試行錯誤を続けました。結果として、「プラチナの社員章」がメンバー全員に贈られたのは、2004年1月6日の朝でした。嬉しいことに、それはみんなから大歓迎されたのでした。

  これは、私が考え方を改めて取り組んだからです。ただ単に「社員章をつけなさい」と会社から一方的に押し付けるというのではダメでしょう。強制しては意味がありません。そうではなくて「是非身につけたい」と思ってもらわなければならないのです。そして、結果として全員が忘れずに身につけて出社するような「文化」にしなければならないと考えました。

  人間は面倒なことなどしたくはありません。社員章に価値を見出さなければ進んで身につけることなどないでしょう。価値がないものであれば、面倒に感じてしまうのが当然なのです。

  まず、私は「みんなにプラチナ級の人材になって欲しいんだよ」「みんなにはプラチナ級の価値があるんだよ」ということを伝えてゆくことにしました。それから、デザインや製法に一切の妥協を許しませんでした。一般的な社員章というのは銅や真鍮の台にデザインしてつくられます。ところが、ライブレボリューションの場合は、比較的やわらかい素材であるプラチナに、デザイン上のこだわりから、手作業による「くり貫き加工」まで行っています。

  値段はご想像にお任せしますが、一般的な社員章に比べて数十倍となっています。それでも一度に何百個も発注するわけではないので、財務的には問題ありません。ちなみに、なくしてしまった場合は翌月の給料から天引きされます。ですから、なくさないように気をつけなければなりません。否が応でも、意識が社員章に向いてしまうでしょう(笑)

 出来上がったプラチナの社員章を見せたとき、男性からは「かっこいい!」、女性からは「かわいい!」という感想が漏れました。特に女性のほうが喜んでいました。その理由は、形が「ハートマーク」に似ていたからです。この社員章のデザインは、ライブレボリューションのロゴマークを使用しています。このロゴマークを、少し斜めに傾けるとハートマークに見えるのが人気の秘密です。それにしても、このプラチナの社員章を身につけて歩いてみると心がビシッとして、背筋が伸びる思いがするから不思議です。

  ある人から、「その社員章がハートマークに似ていることと『LR HEART』とはやはり関係があるのですか」と聞かれたことがあります。実は、この質問を受けるまで、私はそれを意識したことがありませんでした。つまり、全くの偶然だったのです。ロゴマーク自体、『LR HEART』を作る前にデザインしたものですし、「L」と「R」をいろいろ組み合わせてみたときに「これがかっこいい」と思ったものを採用したに過ぎません。また、『LR HEART』というネーミングの由来は、全く別のところにありました。それについてはもう少し後のほうで説明させていただきます。

  私は「メンバーこそがライブレボリューションの最高のショーウィンドウだ」という認識を持っています。この社員章はプラチナ級の人材の証です。ですから、自分たちをもっとアピールするためにも社員章を身につけて外を歩いて欲しいと考えています。そして、高い意識と誇りを持ってお客様に最高のサービスを提供して欲しいと願っています。