第二章 理想の文化を形成する
1.企業の文化は真似できない ― 最強の差別化戦略
社長の性格を企業の文化に反映させる
 どの企業にも何らかの形で文化が存在します。しかし、他社とはっきり差別化できるほどの企業文化を持っている企業となると、その数はあまり多くないでしょう。

  おそらく、ありきたりな企業文化しか持たない企業の社長(会長や最高経営責任者を含む)は、独自の優れた企業文化を形成することにはあまり興味を持っていません。ところが、その重要性を認識し、「企業文化のブランド化」ともいえるほど、熱心に独自の優れた企業文化を形成することに力を入れている企業もあります。サウスウエスト航空やリッツ・カールトンがそうであるように、これらの企業では必ずといってよいほど、トップ自らが企業文化の形成に力を入れています。

  私が本格的に企業文化の形成に力を入れ始めたのは、2005年からです。それまでも、企業文化はありました。ところが、それは「ありきたり」の域を超えるものではありませんでした。

  企業文化を形成する上で最初に取り組んだのが『LR HEART』を作ることでした。そこには、私の想いや価値観を反映させました。この『LR HEART』に沿ってさまざまな制度を整えていきました。メンバーには『LR HEART』に書かれていることに沿って行動するよう求めました。その間、『LR HEART』の価値観に合わない人は辞めていきました。やがて、一年もすると『LR HEART』を理解し、実践しているメンバーだけが残りました。結果として、他社にはない唯一無二の企業文化が形成されていました。

  もし、企業文化をブランド化したいと思っているのであれば、それが時間のかかる仕事であり、いつまでも取り組み続けなければならないということを覚悟しなければなりません。もし、「それはいつ終わるのか」と聞かれたとしたら、私は「知らない」と答えるでしょう。どうして知ることができるでしょうか。文化の形成には終わりなどないのですから。

  企業文化をブランド化する上で大事なことは日々の徹底です。その企業で働く人たち全員に浸透し、実践できていなければなりません。できている人とできていない人が混在しているようでは駄目です。ブランドとは信頼の証だからです。そのブランドからは常に同じ水準のものが手に入らなければなりません。

  なぜ、私は企業文化の形成に力を入れ始めたのでしょうか。それは、企業文化のブランド化が最強の差別化戦略だということに気づいたからです。商品やサービスは真似ができても、企業の文化は絶対に真似することができないのです(「ありきたり」な文化であれば、真似をするまでもなく、どこにでも存在するのでしょうが)。

  企業が生み出すサービスは、突き詰めていくとその企業の文化に起因します。iPod を創ったアップルは、次々とワクワクするようなアイテムを生み出していますし、格安運賃の航空会社であるサウスウェスト航空は、いつも楽しい空のイベントを生み出しています。これらの企業は、そうなるような企業文化を持っています。

  一発当てたようなまぐれのヒット商品を生み出せただけではあまり意味がありません。次々と継続的に定番となるようなヒット商品を生み出す必要があります。ビジネスは、企業文化を大きく反映しています。ですから、優れた商品やサービスを継続して生み出すためには、根底にそれを可能とする企業文化が必要となります。

  では、ブランドとなるほどの企業文化を創るためにはどうすればよいのでしょうか。私は、社長自身の性格と、それを企業文化に反映させるという意思と行動が必要だと思います。

  この世には同じ性格の人間など一人もいません。また、私と同じ性格になろうと思っても、誰にも真似することはできません。従って、他の企業の文化と差別化したければ、徹底的に社長の性格を企業文化に反映させればよいのです。これが企業文化とそこから生まれるビジネス(商品やサービスも含めた)の独自性を生み出すことにつながるのです。

  お客様は、別に商品やサービスだけを購入しているのではありません。それらの根底にある企業文化も含めて購入しているのです。たとえ商品やサービスは真似されたとしても企業文化までは真似できません。もっといえば、真に差別化された企業文化をもった企業が生み出したものであれば、商品やサービスでさえも真似することはできないでしょう。

  企業文化を浸透させることが一番できるのは、言うまでもなく社長です。そして、決して他社には真似できないという企業文化を形成したければ、社長の性格だけを徹底的に反映させることです。もちろん、社長の性格のうち、至らない点を反映させてはいけません(だから社長は常に人間性を高め続けなければならないことは言うまでもない)。

  自社の企業文化を差別化し、ブランドにまで高めることができた企業は有利になります。例えば優れた人材を惹きつけ、その能力を引き出し、長期に渡ってつなぎとめることも可能になります。

 また、どこにもない素晴らしい文化を形成できれば、従来のストックオプションや高い給料、高い地位(役職)といった特典よりも優秀な人材の心をつなぎ止めることができます。「ここしかない」と思える企業文化に出会った人にとっては、規模、知名度、給与水準等の優先度はかなり低下します。従って、優秀な人材をつなぎとめるために支払っていた割高な給料が必要なくなるため、利益の出やすい会社になるのです。

  ここで忘れてはならないのは、そこで働く人たちこそが企業文化の体現者であるということです。ですから、社長の性格を企業文化に反映させるといっても、彼らを無視してはなりません。ライブレボリューションの企業文化を形成する上で私が常に気を配っているのは、メンバーたちの「ニーズ」です。これを完全に無視してしまったとすれば、全員が辞めていたでしょう。

  企業文化の形成のための取り組みは慎重にやらなければなりません。ただし、メンバーのニーズに気を配るとはいえ、迎合する必要はありません。それでは意味がありません。短期的には反対されるものとしても、そして一部の人たちからは全く受け入れられないものであっても、『LR HEART』の内容に沿ったもので、「やるべきだ」と決断したときはやるべきです。それが社長の仕事でもあります。

  万一、辞める人が出てきたならば、それは企業文化になじまなかったということです。正しいと信じて行動し、その結果として辞める人が出てきてしまうということを覚悟していなければ、唯一無二の企業文化を築き上げることなど不可能だと思います(私の中には「自分がやるべきだと確信を持ち、自分以外のメンバーの中に一人でも心から賛同してくれる人がいるならば、やる!」という判断基準がある)。

  ライブレボリューションは理想を追求する企業文化のブランド化を進めています。もちろん、それは理想の企業を創造するための最強の差別化戦略だからです。