3.おもてなしの心を大切にする ― ホスピタリティ
礼儀正しさは強力な武器となる
 1999年11月10日、私はGMOインターネット株式会社熊谷正寿代表取締役会長兼社長(以下、熊谷社長)の講演会に出席しました。それは、ある監査法人が主催した「上場セミナー」で、当時の熊谷社長は「独立系ネット接続で初の公開を果たした若手起業家」として注目を集めておられました。

  そのセミナーのあとに開かれた宴席で、熊谷社長と名刺交換をするチャンスがめぐってきました。当然、熊谷社長の前には名刺交換を求める人たちの長蛇の列ができています。私はその最後尾に並びました。

  熊谷社長は紳士的で、その話し方はとても丁寧でした。終始笑顔も絶やしません。

  あまりお時間をとっても申し訳ないと思った私は、お別れのお辞儀をし、その場を立ち去りました。そして、歩いて2、3歩のところで振り返ったそのときです。

  「え!!」

  私の中に大きな衝撃が走りました。振り返った私の視線の先にあったのは、頭を深々と下げたままの熊谷社長の姿だったのです。

  証券会社入社一年目の単なる一営業マンであった私に、上場企業の社長が頭を下げていました。しかも、私がその場を立ち去った後も、その姿勢を崩していませんでした。それに引き替え私はといえば、熊谷社長よりも先に頭を上げたうえに早々とその場を立ち去っていたのです。

  このとき私は、「熊谷社長は、私など足元にも及ばないくらい人間ができている」と思いました。そして、「こんな人が世の中にいるのか」と大きなショックを受けたのでした。

  これが熊谷社長と私の出会いです。私は、熊谷社長の人柄と経営のあり方から様々なことを学ばせていただいています。

  そんな熊谷社長も、過去に読んだ『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(G・K・ウォード)という本の中に記されていた「礼儀正しさに優る攻撃力はない」という言葉を見つけたとき、大きな衝撃を受けたそうです。


  礼儀正しさが大切なことは承知していたつもりですが、それを『攻撃力』という視点から見たことがなかったからです。

 『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(かんき出版)より



  礼儀正しさは強力な武器となります。『LR HEART』の「基本原則」を書いている最中にも、熊谷社長とはじめてお会いしたときの光景を何度も思い出しました。


 「基本原則」17項

 礼儀正しさは強力な武器となります。LRのメンバーとしてふさわしい礼儀、マナーを大切にします。言葉遣い、会話の内容、挨拶、身なり、表情、作法、時間等に気を配ります。商品やサービスの品位は、それらを提供するメンバーの品位に強い影響を受けます。


  ライブレボリューションでは、礼儀やマナーを大切にしています。従って、ライブレボリューションに内定した方には、入社前から「マナー研修」を受けていただいています。

  礼儀正しさは相手を尊重する気持ちから生まれると私は考えています。つまり、礼儀正しさが身についていないという人は相手を尊重することができない人、できていない人である証拠なのです。

  新卒採用でお会いする学生の中には、明らかに礼儀がなっていない人たちがいます。20年近くも一生懸命に学問を学んできたのに、礼儀正しさは学んでこなかったのです。その気になれば、1週間で身につくものにもかかわらず、その時間を作ってこなかったのでしょう。私は、礼儀を欠く学生を見ると「もったいないな」と思わずにはいられません。

  このように考えてみると、礼儀正しさが身についていない人ほど自己中心的な性格である可能性が高いといえます。ビジネスはお客様を中心に据えて考えるのが基本ですから、自己中心的な性格の人は、あまりビジネスには向いていないと思います。また、コロンビア大学の総長をつとめたニコラス・バトラー博士はこう言っています。


  自分のことだけしか考えない人間は、教養のない人間である。たとえ、どれほど教育を受けても、教養が身につかない人間である


 まさにその通りだと思います。基本的に、人を変えること、人の性格を変えることは容易ではありませんから、はじめから自己中心的な性格の人を採用しないようにするというのがライブレボリューションの方針です。

  もし、メンバーの一人が礼儀を欠いた行動をとっていたとしましょう。おそらく、相手はライブレボリューションのメンバーにはそのような人間しかいないと判断するでしょう。ですから、礼儀正しく相手に接することができないというメンバーがいれば、その人は大切な仲間たちのことすら考えていないといえます。ライブレボリューションが採用すべきは、礼儀をわきまえていて、私たちが誇りを持って送り出せる人材でなければなりません。

  アルフレッド・テニスンは「偉大な人物ほど礼儀を知っている」と言いました。

  礼儀は、その気のある賢い人なら、誰でも身につけられるものです。ついでに書いておくと、本当に賢い人というのは、性格がよいのです。利口ぶって性格が悪い人は、実は頭が悪い人です。

  私は、熊谷社長のお辞儀一つから、それが大きな攻撃力になるということを、身を持って体験しました。

  礼儀正しさは強力な武器となります。ライブレボリューションのメンバーは、相手を尊重する気持ちから礼儀正しさが生まれることや、その礼儀正しさによって攻撃力が増すことを忘れてはなりません。