価値観を給与の評価基準に組み込む
  「価値観を浸透させたい」
  「価値観に沿った行動をしてほしい」

  このように強く願う経営者の行き着く先は、「価値観を給与の評価基準に組み込めばよい」となるはずです。ところが、「では一体どうすればよいのか」となると、なかなかよいアイデアが浮かばないのではないでしょうか。私はこのテーマに一年がかりで取り組みましたが、それはとても長い道のりでした。

  実際、すでにライブレボリューションでは、価値観が給与の評価基準に組み込まれています。しかもそれは、Web 技術でシステム化されています。

  もしかすると、「それは、さぞかしシステム開発でとんでもなく時間とお金がかかったのではないか」と思われるかもしれません。ところが、内訳でいうと「構想9ヶ月、開発3ヶ月」といった感じです。社内のエンジニアが一人で作りました。オープンソースがベースとなっていますので、開発コストの大部分は人件費です。

  『LR HEART』をつくり、その読み合わせを始めてみて一番感じたことは、「どうして、こんなに明確に書かれていることを実践できない人がいるのか」ということです。『LR HEART』を理解していても、それが行動に現れない人もいます。また、同じ人でも、 『LR HEART』に沿った行動ができる部分とできない部分があったり、できる日とできない日があったりしました。

  「常に意識していればできるはず」

  ところが、やはり人間ですから常に『LR HEART』を意識できるとは限りません。人によってムラができてしまうのも仕方がないことです。ついに私は「『LR HEART』に沿った行動ができていませんよ」と一人ひとりに伝えることの限界を悟りました。

  「できていても、できていなくても一緒なら、『LR HEART』の存在価値は何?」

  旧来の日本企業の「年功序列賃金」の弊害は、「仕事ができてもできなくても給料が同じように上がる」ということでした。そうすると、「仕事をがんばるだけ無駄なのではないか」あるいは、「仕事をやるだけ損なのではないか」と考える人も出てきます。これでは、仕事にまじめに取り組んでいる人たちのやる気をそいでしまいます。これは、スポーツやゲームで、相手がルール無用でプレーしてくるのに、こちらだけがルールを守るのはばかばかしいと感じるのと同じです。

  『LR HEART』は、いわゆる「規範」でもあります。しかも、最も重要な規範です。そんな『LR HEART』に沿って行動しなくても、何も変わらないというのであれば、いずれ形骸化してしまうか、規範として維持するために相当な労力を払わなければならなくなるでしょう。もし『LR HEART』を無視した行動を黙認し続けてしまえば、社内のあらゆる規律が意味をなさなくなり、モラルもひどく低下してしまうに違いありません。これではむしろ、『LR HEART』などないほうがマシだと思います。

  そこで私は、次の二つの課題を設定し、検討しました。

  「自ら『LR HEART』を守りたいと思ってもらうためにはどうすればいいか」
  「自ら『LR HEART』を無視してはまずいと思ってもらうためにはどうすればいいか」

  D・カーネギーは、その著書『人を動かす』(創元社)において、人を動かす秘訣はこの世にひとつしかないと言っています。

  「自ら動きたくなる気持ちを起こさせること」

  であるならば、やはり一番わかりやすいのは、給与評価の対象とすることではないでしょうか。そこで私は、『LR HEART』を給与の評価基準に組み込むことにしたわけです。

  きちんと『LR HEART』を守ることで給与が上がるというのであれば、それを日々自然と意識するようになります。しかし、時と場合によっては忘れてしまったり、ひどい場合には故意に無視したりする人も出てくるかもしれません。後者の場合は、それが給与の評価を下げてしまうことになり、結局自分に跳ね返ってくることになります。

  私は、本当に賢い人であるならば、早期に『LR HEART』に書かれていることを習慣化してしまい、それを「あたりまえのもの」にしてしまうと思います。あたりまえになってしまえばこっちのもので、普段どおりに行動しているだけで評価が上がり、給料も上がってゆくからです。逆に、意識が低い人というのは、ダラダラと改善を先送りしてしまい、気付いたときには給料が低いことに愕然となるのが目に見えます。それは自業自得以外の何物でもありません。

  こうして、『LR HEART』という「規範」をもとに給与評価をしていれば、社内に自然と規律が生まれ、『LR HEART』の価値観が浸透していくでしょう。

  理想は見えました。確信も持てました。

  「では、実際に価値観を給与の評価基準に組み込んだ制度とはどんな仕組みなのか」

  それをあれこれ模索しているだけで、なんと9ヶ月も経ってしまいました。しかし、ここでの試行錯誤とその努力は、ライブレボリューションのオリジナル給与評価システムである『Six Members Valuation(シックス・メンバーズ・バリュエーション)』として結実することになります。